児童虐待による痛ましい事件が起こるとその行動が注目される児童相談所(以下、児相)。実際に児相がどんな仕事をしているか?どんな役割があるか?というのは謎のベールに包まれていますよね。
この書籍【ルポ 児童相談所】はその謎の一部を知ることができる一冊です。
適切な対応を取らず、事件に繋がってしまうこともありますが、全ての児相がそうではないと私は思います。現に20年近く前にうさぎ兄弟を虐待から救ってくれたのは親戚と児相でした。
ルポの著者である大久保真紀さんはまえがきでこう書かれています。
児童相談所を批判するだけでは生産的とは言えない。多くの児童相談所のワーカーたちは懸命に働いている。しかし、職員が足りず、財政的な裏付けも乏しいという状態では、十分な対応はできないし、専門性の高い人材が揃うには時間もかかる
今回は、【ルポ 児童相談所】を読んだ感想と自分の経験を踏まえ綴ってみました。
「うさぎたちもこんな感じだったのだろうか?」と推測しながら、読み始めてから1時間半かからず読みきりました。
この本はこんな人におすすめ
- 虐待対応をする職員の仕事について知りたい
- 一時保護はどんな感じで行われるのか知りたい
- 子どもに関わる職業に従事している
虐待から子どもたちを守るために日夜頑張っている多くの職員を知ることができますよ。
【ルポ 児童相談所】を読んだ感想
読み始めると一番はじめに「包丁を持ち出されて」と衝撃のタイトルでした。
(うちの毒母も切れると包丁持ち出すよ、子ども相手に。苦笑)
この母親は自分の腹に包丁を向けたようですが、職員にそれを向ける親だっています。逆上する親に殴られたり、罵倒されることだってあります。
まさしく一時保護は命がけですね。
「子どもを返してくれないなら、死んでやる。」と脅す親もいますが、個人的には頭冷やしてください。という感じですね。
- 「子どもを返してくれないなら、警察呼びます。」←あなたたちが呼ばれる側ですよね?
- 「警察に相談に行きます。」←どうぞどうぞ
職員さんの代わりにここで呟いておきます。
書籍全体は6章で構成されています。約300ページ。
- 一時保護の現場
- 子どもからのサイン
- 親と向き合う
- 地域全体で子どもを守る
- 児童相談所の素顔
- 現場からの声
この書籍でも問題視されているのが「慢性的な人材不足」。
児相の職員さんたちも私たちと同じ人間なので、やはりバランスが取れていないといい仕事はできないと思います。
自分たちが苦しくても日夜子どもたちと家族のためにお仕事されているという職員さんたちですが、実は勤続年数が短い。
H27のデータではありますが…
- 新人(1〜3年):4割ちょい
- 中堅(3〜10年):4割ちょい
- ベテラン(10年以上):2割きっている
色々な経験を積んで、知識も実践も一人前になる頃には辞めてしまうということですよね。
燃え尽き症候群とか結婚や妊娠、出産などで継続できないのでしょうか?
大久保さんによると
ワーカーの配置数が多い全国でも多い、この児童相談所では、阿部が担当するケース数は約70件だが、全国を見渡せば、ワーカー1人あたりの担当数が100件を超えることも珍しくない。ちなみに、英国、米国、カナダなどでは1人あたりの担当ケース数は20前後と言われている。
諸外国に比べ、日本のワーカーは少なくても3.5倍、多くて5倍の仕事量をこなしていることになる。
迅速かつ正確さが求められ、丁寧な細かいケアもやっていくにはありえない数字ですよね。
だから、日本は児童虐待の対策が遅れているって言われてしまうですよね。恥ずかしい。
早く増員してください。納税したい分野に税金納めれるシステムになったら、まずはこの分野に納税したいくらいです。
活字はちょっと苦手。という方は漫画がおすすめ
文庫本で字も小さく、300ページ近くあるので活字が苦手な人は抵抗があるかもしれません。
でも、せっかく児童虐待や児相に興味関心を持っているなら知ってほしいと思います。
「もっと簡単に読めるものはないの?」という方におすすめなのが、漫画です。
中でもこの3つは良い作品だと思うので、ぜひ手にとってみてください。
- ちいさいひと 夾竹桃ジン 小学館
- 児童福祉司 一貫田逸子 さかたのり子:作画 穂実あゆこ:原作 青泉社
- 愛ときずな〜虐待ケアの挑戦〜 椎名篤子:原作 ごとう和:漫画
一時保護を経験して 〜うさぎの経験談〜
余談ですが、ここでうさぎの経験談を少し。。
私が一時保護された場所は中学校でした。
呼び出されて「何も悪いことしてないけど。」とか呑気に構えていたら、一時保護でした。(虐待父が仕事にいっている間に)
同時間に自宅にいる兄弟は母親と。他の2人は小学生、保育園でそれぞれの場所で保護。再びみんなにあったのは児相でした。(うさぎ家の場合、ちょっと特殊だったようで母親込みで一時保護。)
5人の兄弟は散り散りになり、私は下の弟2人と母親の4人で児童養護施設が併設するシェルターのような場所でしばらく生活しました。他2人は別。
書籍にもあるように学校には通えませんでした。(見つかるといけないから。)施設の子達が学校へいくのを「いってらっしゃい。」と見送っていたと思います。どうやって勉強してたかは覚えてないけど。
家に帰れない不便さはありましたが、本当に幸せでした。
何よりも食べることも寝ることも制限されることもなく、殴られることも罵倒されることもありません。
許されないとわかっていても「ごめんなさい、許してください。」と土下座して謝り続ける必要もない。
施設の子とも仲良くなり、帰りたくありませんでした。あの期間が一番子どもらしく生活できたかもしれませんね。
結局のところ、母親が環境に適応できず無理やり保護解除。また、虐待のある家に帰ることになったのですが…。(ほんとアホな話。苦笑)
施設での生活は楽しかったことしか記憶にありません。
児相について調べてみた
児童相談所=虐待の対応というイメージが強いのですが、実は色々な仕事をしています。
Wikipedia先生によると…
児童すなわち0歳から17歳の者を対象に以下のような業務内容を行なっている。
- 児童に関する様々な問題について、家庭や学校などからの相談に応じること。
- 児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行う。
- 児童及びその保護者につき、前号の調査又は判定に基づいて必要な指導を行なうこと。
- 児童の一時保護を行う。
児童に関する様々な問題に関する相談の種別は5つ。
- 養護相談 父母の家出、死亡、離婚、入院などによる養育困難、被虐待児など。
- 保健相談 未熟児、虚弱児、小児喘息など。
- 心身障害相談 障害児、発達障害、重度の心身障害など。
- 非行相談 虚言、家出、浪費癖、性的な逸脱、触法行為など。
- 育成相談 性格や行動、不登校。
児童虐待は養護相談に分類されます。
全国にある児相の数は現在210か所。(平成29年4月1日 現在)
設置義務:都道府県、政令指定都市なので、必ず1つはお住いの県にあるはずです。
元被虐待児からのお願い ”地域の力も底上げしてこ!”
元被虐待児のうさぎとしては、もっと地域に住む子どもに関心の目を向けてほしいと思います。
児童虐待だけではありませんが、地域住民の協力って絶対不可欠です。
家庭ってブラックボックスだから、行政の力だけでは発見しにくいことがあるのも事実。
虐待かの判断や対応は専門家がするので、そのための発見のチャンスを地域で作っていくと考えるといいかもしれません。
例えばこんなことありませんか?
- 子どもの悲鳴や鳴き声が絶えず聞こえる
- 子どもが大きな怪我をよくしている
- 親の罵声や怒声が毎日のように聞こえる
- 奥さん(旦那さん)がよく暴力を振るわれている
- 義務教育なのに学校に長期間行ってない様子(不登校の場合もあるけど)
もし、子どもの不注意で怪我をしたり、怒られて泣いているとしてもそれは継続しては起こりません。
「これって虐待じゃないの?」と少しでも疑問に思われるのであれば、まずは身近な人に相談してみてください。
「ずっと続いているけど、あの子心配だな。」と思うのなら、どうか勇気を出して専門機関へ通告しましょう。相談は匿名でできますし、あなたが連絡したのはわからないようになっています。
事件が起こってから「もっと早く相談していれば…」という後悔より、「違ったんだ、よかった。」と思う方がずっついいと思います。
平成27年7月1日から3桁の共通ダイヤルが用意されました。
189でいちはやくです。
あなたの児童虐待への関心とほんの少しの勇気が救う命は必ずあります。
どうかよろしくお願いします。
まとめ
子どもと保護者、関係機関との板挟みになりながらも、子どもたちの幸せのためにお仕事をされている職員の方々には本当に頭が下がります。
今後も増えることが予測される児童虐待に対応するためには行政の力だけでは難しい部分が出てきますよね。今の子どもたちが今後の日本を作っていくのだから、全ての人に関係することです。
やっぱり地域や民間の力が必要だと思います!
ぜひ、書籍読んでみてくださいね。
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